トロイメライが鳴り響く中、正面玄関から吐き出された中学生達が、ぞろぞろと乱れた列を成して校門に向かって来る。
下校のチャイムはアレなのかと、正門前に立つ少年は校舎を睨みながら考えた。
古き良き時代のデザインを踏襲した、オーソドックスな凸型校舎。
内側に階段を忍ばせ、天辺で一段高くなった部分には真ん丸大時計。
没個性なクリーム色で統一された全体。並んだ窓の手前にはベランダ。
陽光で光る、櫛の歯を思わせる手すりがついたベランダには横長の幕が渡されており、「祝!全国出場………」とデカデカ書かれた文字と共に、風で踊っている。
そんな何とも教科書通りの姿をした校舎を、眼光鋭く睨む少年の顔には、濃密な敵意。
文句のつけようもない…というより、ハナからいちゃもんを付けるつもりでもなければ気の利いた悪口も思い浮かばないような校舎が、それでも憎々しく見えてしまうのは…、
(立子館…。ここにあの野郎が…)
在校生のひとりに対する敵対心のなせるわざである。
一際強く吹いた風にバタタッと幕がはためき、そこに記された文字が踊ると、少年の顔はさらに険しくなった。
記されているのはこうである。『祝!全国出場 相撲部羊山君』。
(…あの野郎が、この学校にっ…!)
余所行き用のオシャレ黒ジャージを着込み、肩からスポーツバッグを吊るした少年は、きつく拳を握りしめ、猛々しく顔を歪め、ギリリと牙を噛み鳴らした。
二字口を中心に俵が廻らされた、円形の空間。
その内と外は全くの別世界。舞台であり合戦場でもあるそこの雰囲気が他と異なるのはいつもの事だが、その少年には、今はまた特別その違いが実感されていた。
高い天井と抑えられた照明の下、場内の空気が重く、粘っこく、肌に纏わりついて刺激してくるように感じられるのは、会場を覆い尽くす独特の熱気のためだけではない。
肌を刺すようなピリピリとした感触の正体は、周囲に満ちる闘志と緊張、そして今か今かと出番を待つ猛者達の昂ぶりによる物…。土俵に注がれる相撲取り達の視線が、熱意が、そこを中心に根本から空気を変えている。
稽古場の土俵とも違う。
地元の大会の土俵とも違う。
出稽古で上がった他所の土俵とも勿論違う。
場所が何処だろうと、設けられて相撲取りが集えば、そこがそのまま特別な舞台となる事を、少年は何となく感じ取った。
「これが…、全国…。夢じゃねえ、本物の全国…」
少年は、知らず知らずに呟いていた。その抑えられた声に宿るのは、闘志か、緊張か、はたまた夢が叶った感慨なのか…。
全国の土俵…。夢にまで見た大舞台がすぐそこにある。自分は今、そこに上がる資格を得てこの場に立ち、その順番を待っているのだと改めて認識すると、武者震いで一度大きく身が震えた。
緊張はある。上体を捻って腰を回し、気負って体が硬くなってはいないか確かめたが、緊張は適度な物で、体が強張るほどではない。
(よし…!)
眼光鋭く、気合満面の凛々しい表情をしているその少年は、大柄なドーベルマンだった。
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強制されない自由意志での
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